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ミュージカル『スコット&ゼルダ』、ウエンツ瑛士さんのファンだからという理由で観劇した私ですが、ここ数日異常に心を持っていかれてまして。
その理由を自分なりに書き留めておこうと思います。

スコットとゼルダだけでなく作品自体のエネルギーが暴走している

主役として描かれた2人はエネルギーが有り余って暴走し、その結果ボロボロに傷ついていった実在の人物だけれど、この作品そのものもエネルギーを有り余らせてギュッと凝縮し、それでもやっぱり溢れまくっている感じがある。

演出の鈴木裕美氏いわく、アメリカ版とは脚本を大幅に変更しているそうだ。アメリカ版のミュージカルは「夫婦の愛っていいね」という感じのラブストーリーだとか。けれど日本版では伝記『ゼルダ』を下敷きに、2人のやり取りした手紙の文面や発言、エピソードもより史実に基づいて作っているという。

日本版でその改変をやろうと思っちゃった時点で、ある意味すでに暴走だ。スコットとゼルダのエネルギーにあてられてか、演出鈴木裕美氏、上演台本蓬莱竜太氏、日本語詞高橋亜子氏の三者のエネルギーも暴走し、その結果誕生してしまった怪作なのではないかと思う。

そして事実ほとんどすべてのシーンが異常にエネルギッシュだ。

溌剌と動き回るゼルダと、他の誰にも見えない理想を常に目で追っているようなスコットが、競うように何度も夢を歌い合う。

現在と過去の回想を行き来する筋立てだが、現在パートの人物であるベン・サイモンが常に舞台上にいるので、過去シーンは熱を持ちすぎた過去の幻影が亡霊として現れたよう。

スコットの執筆の異常な集中力はタップダンスで力強く表現。小説が大ヒットした世間の様子をダンスのみで表現するシーンも圧巻だ。

すべてのシーン、すべての表現方法が「絶対これが面白い」という確信を持って作られているようで、やたらと密度が濃い。

「現実を諦めた大衆」の罪を振り返り変わろうとする人物

詳しく書くとすごくネタバレになってしまうんですが、こういうことを描いてくれた脚本に、ものすごく私は胸打たれました。

自分の目指したい生き方を貫くなんて現実的に無理、と諦めて生きる多くの人々。何か間違っていると思うことがあっても「自分だって嫌だけど仕方ないんだ」と流されてしまう。誰かがそれによって苦しんでも「自分のせいじゃない」と嘯く。実際その人だけのせいじゃないから逃げるのは簡単だ。

こういうことは今の社会でも本当によく目にする。だから、そんな人が大衆の中からふと一人になって自分の人生の選択を見つめ直し、葛藤し、変わろうとする姿が描かれるシーンで涙が止まらなくなった。

ゼルダを一人の表現者として認めて描いている

ともすれば天才のスコットについていけなかった凡才のゼルダにも見えてしまう話だ。けれど、小説を書いたり、絵を描いたり、バレエをやろうとしていたゼルダに対し、セリフやシーンの端々でこの芝居の脚本自体が彼女をきちんと表現者として見ていることが表されている。

実際彼女の書いた文章や描いた絵は、センスを感じさせるもので、本格的に取り組めばものになったかもしれない芸術的才能も垣間見えたらしい。

ゼルダはきっとあらゆる意味で天才だったんじゃないかと思う。男性に生まれていたら何らかの形で自分の才能を発揮することだけ考えて生きたかもしれない。でも、溢れる天才的なエネルギーを女性の体の中に閉じ込めて、瞳を爛々と燃やしている彼女だからこそ、スコットは惹かれ、創作意欲を掻き立てられたのかもしれない。

作家の業に共感できる

でも、ゼルダに書けそうなセンスがちょっと見えたからといって、私も一応お金もらって文章書く仕事してる身として、自分の身内が突然自分が書こうとしてる題材で小説書くわ!とか言い出したら「ふざけんなよばっきゃろい」と言ってしまう自信がある。

というかちょっとセンスありそうだったらなおさら「ちょっとセンスある程度の素人が手出すなボケ!」って気持ちになっちゃうと思う。あのシーンのスコットは勝手だけど、すごい気持ちわかる。

あと、「自分を最高の作家だと思ってないの!?」とゼルダが驚くシーンもすごく意味がわかる。

それは他の作家との比較じゃなくても良くて、すごい作家はいっぱいいるとわかっているけれど、それとは矛盾せず自分の書くものはやっぱり最高だと信じているんです。なぜかそれは揺らがないというか、土台に必ずある。すべての作家がそうなのかは知らないけど、すごく分かると思った。

あ、でも私は人のことを全部書き物のネタにしたりはしませんよ…と言いつつ、気がつくと起こったことを常に頭の中で文章にしようとしている部分はある。スコットもゼルダと出会ったシーンで、出来事や心の変化を全部文章にしてしゃべるのが、非常にオタクっぽくて可愛らしいのよね(笑)。それがエスカレートしてしまったのかな…

孤高の存在である自分を誇りながらも同志を求める2人が愛しい

スコットとゼルダはきっと本当に良く似ていて、2人ともお互いに出会うまで、唯一無二である自分を、自分のような人間が他にはいないことを、誇りに思っていたと思う。でも、それでいて同じ理想を追える、同じ景色を見ることができる同志を求めていた。

そんな相手と出会えて子どものように喜ぶ2人。こんなに天才的で自分勝手で突き抜けた2人でも、生き方を分かち合える人を求めていた。

人間って愛しいな、という気持ちを喚起される。

傷ついていく悲劇の2人を描いている作品だけれど、物語全体を通して感じ取れるのは、人間って面白い、人間って生きるパワーがある、人間って愛おしい、そういうことばかりだ。

『スコット&ゼルダ』、破茶滅茶なエネルギーと人間愛に満ちている作品。

私としては誰よりも、文章を書く人たちにこそこのミュージカルを観てほしい!と思っています。
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