ロマンス小説の七日間 (角川文庫)ロマンス小説の七日間 (角川文庫)
(2003/11)
三浦 しをん

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うんうん、なかなかこれは面白かったぞ。
三浦しをんはこれからも色々読んでみよう。

ただ、冒頭「ロマンス小説」から始まるのは、わかっててもやっぱり読む気失せるんだよなあ。
なんか、イロモノ臭をのっけからガツンと出されるとね……。
こういう構造のモノだと、効果を考えるとどうしても最初に「ロマンス小説」部を持ってくるのが良いようなんだけどね……。でももうその手段も、使い古された感もあるじゃん?

でも読み進めるほどに感心したのは、大きな意味での、人物の心理描写
いや、そんなに複雑な人間心理とか描いているわけでも、ハッとするような描写があるわけでもないんですが……。
これ、主人公の自称で書かれているんですよ。それなのに読者は、主人公のわかっていないことが読み取れるんです。これはやろうと思ってもなかなか上手くできないよ。
主人公の恋人が、主人公のことをどう思っているか、主人公はわからなくなっている。
でも、読者からしたら、もう主人公に「そんなんモロわかりじゃんか!!」と教えてあげたくなるくらい。

これって現実の人間関係でもありえることで、それが小説の中の架空の人間と読者の間で交わされる、一つの仮想コミュニケーションになりうる。

まるで、この小説の中で、主人公とロマンス小説が境界を越えてコミュニケートするように。

つまりこれ、2層構造に見せかけた3層構造なわけですな。



……ていうのを、今、書いてて気付きました。
くっそ、やられた。
侮りがたし三浦しをん。

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)
(2006/05)
絲山 秋子

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今日読みたてほやほや。
最初の『イッツ・オンリー・トーク』読んでて思ったのは、
うっそ! こんな女子ありえねーよ!
ってまず思った(笑)
なんかこれは、ネガティブな憧れの対象としての、非リアルな女性なんじゃないかと。
いや、「誰とでも寝れる」っていうのはね、全然非リアルではないと思うんだよ。
自覚症状の無い超純情っ子でない限り、それはどんな女でもあると思うよ。だってこの主人公の「誰とでも寝れる」は「好きな人となら誰とでも寝れる」だし。
人間として、友達としてでも、ちょっとでも好きだったらね。

言い方を変えれば、女性というものは「誰でも愛せる」と思う。
相手の男性との友情がものすごく強いものだったりしたらわかんないけど……
むしろ女性に限らず「人間は」、だと思うけど、まあ男性になったことないから断言はできんけど。
だって「愛する」って愛そうと思って意図的にすることじゃないか。本能はそれを必ず助けてくれるのだ。

しかし、この主人公、結局ほとんどの男と未遂に終わる。
中でもメンヘラ友達のヤクザさん。
この人に至っては、いい男だ、いい人だ、と思ってて、ある種の信頼関係がなりたってるにも関わらず最初っから、この人とは寝ないだろうと思って寝ないのだ。
かっこつけすぎだ。

でももっとありえないのは、痴漢。
ここに出てくる痴漢は、普通の痴漢とは違う、広義での痴漢の一種という感じで、これが、絶対に実在しないほどいい男だ

ていうか神なんじゃないかこれ。エロイ神だけど。

普段は後腐れないお付き合いなのに、一瞬だけ境界線を踏み越えてきて、それもお風呂で体を洗ってくれるなんて、満点すぎる。
恋人としてとか男として満点というわけではないのがビミョーだけど!
しかもその後しっかり境界線の向こう側へ帰って行きましたよ。ありえない。なんて都合が良い神。


でも、あとがきの、絲山ファンの女性書店員さんが、この主人公にものすごく共感したと言って。
芥川賞受賞で泣いて、絲山氏に電話で「なんであなたが泣いてるの」と冷静にツッコまれたとか言っていて。
きっと、そういう女性がいっぱいいるんだろうな、と思った。
彼女が受賞すると自分のことのように嬉しい女性ファンはきっと多い。
そういう作家なんだと思う。うらやましいな。必要とされてて。


うん、実際共感もするんだけどね、ある意味。そんな世界ほしいなっていう。負にベクトルの向いた理想世界。
主人公に共感するっていうのは、私はちょっと、ちがったなあ……。

同時収録の馬の話の方は、面白かったけど、まあ、これはいいや。
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